
ABMに失注はない|エンタープライズセールスを案件単位で管理してはいけない理由/原ブロVol25
こんにちは。セールスリクエスト代表の原です。
日々様々な企業のインサイドセールス支援に入っている中で思ったことをつらつらと書いていきます。
本日は『エンタープライズ営業』について
最近、自社でもエンタープライズ企業へのアウトバウンド営業をかなり強化しています。その中で思うのは、
「失注しました」
という報告ほど、エンタープライズ営業において意味のない言葉はないのかもしれないということです。
もちろん案件単位で見れば失注しています。
- 予算がなかった
- 優先順位が低かった
- 稟議が通らなかった
理由はいろいろあります。
ただ、エンタープライズ企業を相手に営業を続けていると、案件が失注した後の方が続きが起きるケースは多いです。
- ある部門では失注したのに半年後に別部門から相談が来る
- 担当者が異動して新しい部署で再び商談になる
- 役員が変わった瞬間に話が前に進む
以前は「失注」と捉えていたものが、実は単なるタイミングの問題だったりします。だから最近は案件ではなく、アカウントを見るようになりました。
そしてそれが、ABM(Account Based Marketing)の本質なのだと思います。
「失注」の半年後に別部署から相談が来る
ABMを実践していて感じるのは、企業は思っている以上に一枚岩ではないということです。
例えば
- DX推進部門で失注した案件が半年後に事業企画部門から相談が来る
- 経営企画部門で話が止まったと思ったら別事業部で同じプロジェクトが立ち上がる
- 担当者が異動し、新しい部署で再び声をかけてもらう
こうしたことは珍しくありません。
実際に私たち自身も、過去に接点を持った企業から数ヶ月〜1年後に別部署経由で再度ご相談をいただくことがあります。
案件単位で見れば失注かもしれません。しかしアカウント単位で見れば、関係性が継続していた結果とも言えます。
だから当社では、単純な案件管理だけではなく、「どの部門と接点を持っているか」「誰と会話しているか」といったアカウント資産も重視しています。
エンタープライズ営業で面白いのは課題ではなく組織力学
エンタープライズ営業を始めた頃は、「良い提案をすれば導入される」と思っていました。でも実際は全然違いました。
商談で話していると、提案内容よりも組織の話をしている時間の方が長いです。
例えば
- 誰の仕事が増えるのか
- 誰の評価指標に影響するのか
- 誰が責任を持つのか
- どの部署が予算を負担するのか
- 誰が最終的に意思決定するのか
といった話。
エンタープライズ営業をしていて面白いのは、この組織力学が見える瞬間です。どれだけ良い提案でも、
- 特定部門だけ負荷が増える。
- 既存の権限構造を変えてしまう。
- 責任の所在が曖昧になる。
こうした状態になると案件は止まります。
逆に提案内容が完璧でなくても、関係者全員が前向きになれる状態を作れれば案件は進みます。
だからエンタープライズ営業は課題解決だけでは弱いです。意思決定の構造を理解することが重要になります。
2回目商談から訪問する価値が一気に高まる
最近特に感じているのがこれです。
エンタープライズ営業において、2回目商談から訪問する価値は非常に高いです。
そもそも初回商談は相互理解の場だと思っています。
まずは
- 自社が何者なのか
- なぜその事業をやっているのか
- どんな顧客を支援しているのか
を理解してもらいます。
そして
- 相手は何をミッションとしているのか
- 今どんな状況なのか
- 何に困っているのか
これらを理解します。
この段階では提案を急ぎません。むしろ提案しないことの方が多いです。
アウトバウンド商談の多くは課題が言語化されておらず、優先順位が付いておらず、プロジェクトも存在していません。
そんな状態から始まります。だからまずは対話が重要になります。
一方で2回目商談に進んだ瞬間から状況は変わります。
顧客社内では、「この提案は検討する価値があるのか」という議論が始まっています。
ステークホルダーが増え始めます。
このタイミングで訪問すると
- 誰が推進者なのか
- 誰が意思決定に影響するのか
- 誰が懸念を持っているのか
- どんな稟議プロセスなのか
が見えやすくなります。
最近は商談を進めるためというより、意思決定構造を理解するために訪問している感覚に近いです。
だから私たちも、クライアントにはエンタープライズ案件では可能な限り現地へ足を運ぶように伝えています。
商談を進めるためというより、組織を理解するためです。
オンラインでは見えない情報が、訪問すると驚くほど見えてきます。
エグゼクティブタッチは「会う理由」を作る活動
最近特にしっくりきたのが、エグゼクティブタッチという考え方です。エンタープライズ営業において重要なのは、商談を獲得することではありません。意思決定に影響を与える人と接点を持つことです。
そのために
- CxOレターを送る
- 役員向けイベントを開催する
- ラウンドテーブルを実施する
- 顧問や知人から紹介をもらう
- 会食をする
- ゴルフをする
といった活動が存在します。
しかし重要なのは施策ではない。本質は「相手が会いたくなる理由を作れているか」だと思います。
エンタープライズ営業をやり切る企業は、アポを取ることを目的にしていない。役員との関係性を作ることを目的にしています。
商談はその結果として発生します。だからイベントも会食も紹介も、単なる接待ではありません。重要な営業活動なのです。
ABMの本質は案件管理ではなく人間理解
最近の自分なりの結論はここにあります。
エンタープライズ営業は企業を攻略するゲームではないです。
ステークホルダーを理解するゲームです。
- 誰が推進したいのか
- 誰が慎重なのか
- 誰が反対するのか
- 誰が最終的に意思決定するのか
そして
- その人たちは何を評価されていて
- 何を守ろうとしていて
- 何を恐れているのか
そこまで理解できて初めて案件は前に進みます。
だからABMとは、単にターゲット企業を定める営業手法ではありません。
アカウントの中に存在する複数のステークホルダーを理解し、長期的な関係性を構築していく活動だと思っています。
- 案件は失注するかもしれない
- 担当者は異動するかもしれない
- 組織は変わるかもしれない
でも関係性は残ります。だからABMに失注はないのです。
エンタープライズセールスとは、案件を追いかける仕事ではなく、アカウントの中に信頼のネットワークを作り続ける仕事なのだと思います。
最後に
だから私たちはアポ数だけを追いません。
エンタープライズ企業との関係性資産を積み上げることを重視しています。
- 部門を超えて接点を作り、役員との接触機会を増やし、組織の意思決定構造を理解する
- 時には案件にならないこともある
- すぐに商談化しないこともある
それでも、その企業の中に信頼できる接点が増え、誰が何を考え、どのように意思決定が行われるのかという理解は確実に蓄積されていきます。
そして、その蓄積があるからこそ、半年後や1年後に新しい案件が生まれます。
私たち自身、エンタープライズ企業への営業活動を続ける中で「失注したと思っていた企業」から再びご相談をいただく場面を何度も経験してきました。
だからエンタープライズ営業の成果は、今月のアポ数だけでは測れません。
- どれだけのアカウントと関係性を築けたか
- どれだけのステークホルダーを理解できたか
- どれだけの信頼のネットワークを構築できたか
その積み重ねが、3年後の売上や大型案件の獲得につながるのだと思います。ABMに失注はありません。
不定期で気が向いた時に更新していきますので、どうぞお付き合いください。
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