
セールステックが伸び続けるのは難しいのか/原ブロVol36
こんにちは。セールスリクエスト代表の原です。
日々様々な企業のBtoB営業支援に入っている中で思ったことをつらつらと書いていきます。
本日は『セールステック』について
セールステックについて考えていて、最近一つ整理できたことがあります。
一言でセールステックと括ってしまいますが、実際には全く違うビジネスモデルが混在しています。
その違いを生んでいるのが「使えば使うほど、顧客側にデータが資産として蓄積されるか」だと思っています。
この違いによって、受注難易度も、解約率も、LTVも大きく変わります。
CRMは「データ蓄積型」のセールステック
わかりやすいのがCRMです。
CRMには、顧客データ・商談履歴・活動履歴・担当者情報・受注・失注データ・営業プロセスなどが蓄積されていきます。
使えば使うほど、企業にとって重要なデータが貯まっていきます。
つまり、CRMは単なる営業を便利にするツールではなく、使い続けることで、企業の営業資産そのものになっていきます。
ここがかなり強いです。
データが貯まると、変動費から固定費に近づいていく
CRMの導入は重いです。
- 社内で要件を整理する。
- 既存データを移行する。
- 営業プロセスを設計する。
- 他システムと連携する。
- 現場に推進・定着させる。
- 経営や情報システム部門まで巻き込む。
当然、受注難易度も高いです。
ただ、一度入ってしまえば話は変わります。
数年間蓄積した顧客データや商談履歴が入っているCRMを「今期ROIが悪かったから来月からやめよう」とはなりづらいです。
営業活動そのものがCRMを前提に動いているからです。
データ移行にもコストが発生します。
外部ベンダーへの構築費用も然り、業務フローの変更・現場への再教育も必要になります。
結果として、企業側からするとCRMは徐々に固定費に近い存在になります。
だから受注は重いですが、LTVは伸びやすいです。
一方、商談やリードは資産として残らない
これとは全く違うのが、
- 商談提供
- リード供給
- 営業リスト供給
のような領域です。
例えば「月50件のリードを提供します」「月20商談を創出します」
というサービスです。
導入するときの期待値は非常にわかりやすいです。
商談が増えるなら使ってみようとなります。
CRMのように全社の営業プロセスを変える必要もありません。
大規模なデータ移行もありません。
他部門を巻き込まなくても導入できるケースも多いです。
だから、比較的受注は軽いです。
特に2024年頃「インテントセールス」という強いキーワードが一気に広がった時期は、この期待値が非常に高かった印象があります。
「今、ニーズがある企業がわかる」
と言われたら、営業責任者としては当然興味を持ちます。
新しい営業手法への期待値だけでも、導入理由を作りやすいです。
ただ、このモデルには逆側の特徴があります。
期待値で受注できるサービスは、成果で解約される
商談提供型やリード供給型は、導入時点では期待値で売れます。
問題はその後です。
- 商談が増えない
- 良いリードが来ない。
- 受注につながらない。
となると「じゃあ一旦やめよう」が簡単にできます。
なぜなら、やめても企業側に失うものがほとんどないからです。
CRMを解約すると、それまで蓄積したデータや業務フローへの影響を考えなければなりません。
でも商談提供サービスなら、止めれば来月から商談が供給されなくなるだけです。もちろん、それ自体は痛いです。
ただ、過去数年間蓄積してきた「資産」を失うわけではありません。
だから企業側からすると、どうしても変動費として扱いやすいです。
「受注が軽い」ということは「解約も軽い」
ここがセールステックのビジネスモデルを見る上で、かなり重要だと思っています。
CRMのようなサービスは、
受注が重いです。
でも解約も重いです。
一方、商談提供やリード供給のようなサービスは、
受注が軽いです。
でも解約も軽いです。
表裏一体になっています。
営業しやすいサービスは、顧客からするとやめやすいサービスでもあります。
逆に、営業するのが大変なサービスは、一度入るとやめるのも大変です。
セールステックの事業性を見るとき、この違いはかなり大きいです。
「サブスク」と「スポット」は契約形態ではなく、顧客側の認識で決まる
面白いのは、どちらも契約上は月額課金にできることです。
商談提供サービスを月額100万円、年間契約で提供すれば、形式上はサブスクリプションになります。
でも、顧客側から見れば本当に固定費なのでしょうか。
個人的には違うと思っています。
成果が悪ければ契約更新しません。
予算が厳しくなれば削ります。
営業方針が変われば止めます。
つまり契約書上はサブスクでも、顧客の頭の中では変動費です。
逆にCRMは毎月利用料を払っているだけでも、営業活動のインフラになれば実質的には固定費になります。
だから、「月額課金かどうか」より、「顧客がそのサービスを止められるかどうか」の方が重要です。
SaaSかどうかではなく、顧客のPLの中でどう認識されているかを見る必要があります。
非データ蓄積型は、常に解約率との戦いになる
ここから事業者側の話になります。
商談提供やリード供給型は、期待値で受注しやすいです。
だから新しいコンセプトが出てきた瞬間、一気に伸びることがあります。
市場に新しい言葉が生まれます。
顧客が興味を持ちます。
問い合わせが増えます。
受注が増えます。
ARRが急激に伸びます。
ここまでは非常に速いです。
問題は、その後です。
成果が期待値を下回った顧客から解約していきます。
すると、成長を維持するためには、解約する顧客以上の新規顧客を毎年取り続けなければなりません。
100社あって10社解約するなら、10社受注してようやく現状維持です。
20社取っても純増は10社です。
さらに顧客数が増えれば、同じ解約率でも解約社数は増えていきます。
だから新規営業を止められません。一度大きな需要を刈り取った後も、ずっと新規顧客を獲得し続けなければ成長できません。
ここがかなりしんどいです。
そしてAIによって機能でロックインすることも難しくなる
さらに今はAIがあります。
少し前に聞いて面白かったのが「プロダクトの機能アップデートと、AIのアップデートのスピードが合わなくなっている」という話です。
これは特に非データ蓄積型のセールステックには厳しいと思っています。
- 営業リストを作れる。
- 企業をリサーチできる。
- メールを生成できる。
- 商談を要約できる。
- 提案資料を作れる。
こうした機能は、AIの進化によってどんどんコモディティ化します。
以前なら新機能を追加することでアップセルできました。
でも半年かけて作った機能が、数ヶ月後には汎用AIでもできる可能性があります。
これによって機能追加によってLTVを伸ばすことまで難しくなっています。
データが残るか、成果を残すか
ここまで考えると、これからのセールステックには大きく二つの方向がある気がしています。
一つは、
データを蓄積することで顧客業務のインフラになります。
CRMはこちらです。
使えば使うほど顧客資産が増え、スイッチングコストが高くなります。
もう一つは、
成果そのものを提供します。
こちらは商談創出や営業リスト、営業支援です。
ツールとして提供するのではなく「その企業との商談や受注を作ります」までやります。
ツールの利用価値ではなく、アウトカムそのものに価値を置きます。
AI時代は、この二極化が進む気がしている
今後のセールステックはこの二つに分かれていくのではないかと思っています。
顧客データが蓄積され、業務インフラになるプロダクトです。
もしくは、
AIを徹底的に使い、成果そのものを提供するサービスです。
その中間にある「便利な営業機能を月額で提供する」というモデルが一番難しくなります。
- データは残らない。
- 成果にも責任を持たない。
- 機能はAIによってコモディティ化する。
- 販管費なので短期ROIを求められる。
そして成果が見えなければ解約されます。
同じセールステックという言葉で括られていますが、事業構造は全く違います。
受注は重いですが、継続します。
受注は軽いですが、継続しません。
その違いを作っている一つの要因が「顧客に何が蓄積されるのか」じゃないかと思っています。
そのサービスを3年使った顧客に、何が資産として残っているのでしょうか。
ここを見ると、その会社のLTVや事業の安定性までかなり見えてくる気がします。
不定期で気が向いた時に更新していきますので、どうぞお付き合いください。
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